ゲームブックとノベルゲームの違い

前のエントリーで自由入力を許すゲームブックと自由入力を許すノベルゲームは何が違うのかという疑問を残していたが、ひとつの答えが出たのでメモ。

 

端的に言うと前者は世界観、後者はキャラクターありきになるというのが結論。世界観を大事にしたかったらゲームブック形式を取る意義が出てくるはず。なぜこういう違いが生まれるかというと、ゲームブックは必然的にテキストに比重が置かれるので人物画のインパクトが相対的に弱い。ノベルゲームでも弟切草かまいたちの夜のようにシルエットにしてインパクトを弱めることはできるが、それでさえ登場人物がが現実。ノベルゲームというフォーマットがキャラを生き生きと描くためのものなんだろうと思う。

 

ただ、ゲームブックでも多少は挿絵があった方がよく、画像系のAIを全く扱わないのは難しいだろうな。

『ロードス島戦記』とその時代4

ソードワールドの始原と週末の巨人という世界設定がビッグバンとビッグクランチから着想されたという話が載っており、最新の物理学や宇宙論をフォローアップする重要性を今更思い出した。重要性というより私もそういうのが好きだったということを思い出したというか。

 

この気づきは、科学理論にこだわるというより、できるだけ多様な切り口を持つことが大事ということに帰着すると考えている。色々な論に対して面白みを見いだせるように勉強なり情報収集なりしていきたい。

『ロードス島戦記』とその時代3

本が手元にないので漠然としたメモになります。

 

ロードスの編集者、吉田(正しい漢字が変換候補に出てこない)氏の「西洋のファンタジーというそれほど知られていないジャンルで、かつ活字のみのコンテンツであることが読者の想像力を膨らませる余白を生み出した」(引用ではなく私の解釈)という指摘は重要で、ゲームブックAIは情報を足しつつ余白を消さない、または生み出すようなものでなければならない。AIは余白を埋めるのは苦手なので必然的に余白は増えていくだろうが、想像力を喚起する行間の開け方というものが多分あって、低い確率でもそれを実現するものにしたい。

ミラーワールド

https://wired.jp/2019/08/02/mirror-world-keyword/

ミラーワールド自体はワクワクする発想で、今後の展開に期待だが、ゲームブックAIとの距離感をどうするかは悩ましい。現実世界との接合があるからこそ面白いという考えは理解できる。ユリイカの『ソーシャルゲームの現在』にあった、ソシャゲは日常生活に浸食している点が新しいという視点もなるほどなあと感心させられたし、惹かれるところはある。

 

基本は距離があるものとして考える一方で、意識はしておこう。

『ロードス島戦記』とその時代2

水野良のインタビューを読んでもう一つ知見を得たのでメモ。小説の軸となるものとして世界観の他にキャラクター、またはデータベースがあり、ハルヒは後者の典型であり、メディアミックスがしやすい。

ゲームブックAIは世界観をデータベース化してしまうものといえるかもしれない(それが前のエントリーでいう換骨奪胎にあたる)が、本質的にはこの考え方に対するブレイクスルーとなるべきもの。

 

水野良がしばしば言及する、分析的なアプローチの対比としてのやり込みにヒントがありそう。私も狭く深くというタイプなので共感しつつ、やり込みから引き出される論理を超えた可能性を信じたい。

『ロードス島戦記』とその時代

安田均へのインタビューで言及されているTRPGにおけるリプレイの位置づけがゲームブックAIの役割を考える上で参考になったので記録。

 

グループSNEがリプレイという手法を開発する前は、シミュレーションゲームなどで将棋の棋譜のような形で最小限のプレイ情報を記録する程度だった。そしてリプレイをもとに小説を書き大流行したものがロードス島戦記。ゲームプレイへの作家性の付与という観点で考えると、棋譜<リプレイ<小説。仮にゲームプレイの情報が保存されたまま作家性が付与されているのなら小説やリプレイから棋譜を復元することが可能であり、AIが得意なのもこのアプローチのはず。

しかし、ゲームブックAIでやりたいのは逆。それが可能になるには足りない作家性の情報を捏造する必要があり、それを実現するヒントが「作家性とはゲームの世界観を歪めるもの」という仮説となる。この仮説自体はそう無茶ではないと思うが、それが真だと仮定した上でさらに「世界観を歪めることで作家性が生まれる」というより無茶な仮説の実証を目指すのがゲームブックAI。

ここまで来てしまうと安田均のいう「作家性」とは定義が違ってきそうだが、そこは掘り下げないのが吉。掘り下げてしまうと何も作れなくなるので。

 

TRPGでは双方向性や即興性が面白さの鍵となる一方で世界観という軸は大事にする必要があるという考え方が一般的だろうが、その軸を換骨奪胎できるかというのがこのAIの肝となる。