『ロードス島戦記』とその時代

安田均へのインタビューで言及されているTRPGにおけるリプレイの位置づけがゲームブックAIの役割を考える上で参考になったので記録。

 

グループSNEがリプレイという手法を開発する前は、シミュレーションゲームなどで将棋の棋譜のような形で最小限のプレイ情報を記録する程度だった。そしてリプレイをもとに小説を書き大流行したものがロードス島戦記。ゲームプレイへの作家性の付与という観点で考えると、棋譜<リプレイ<小説。仮にゲームプレイの情報が保存されたまま作家性が付与されているのなら小説やリプレイから棋譜を復元することが可能であり、AIが得意なのもこのアプローチのはず。

しかし、ゲームブックAIでやりたいのは逆。それが可能になるには足りない作家性の情報を捏造する必要があり、それを実現するヒントが「作家性とはゲームの世界観を歪めるもの」という仮説となる。この仮説自体はそう無茶ではないと思うが、それが真だと仮定した上でさらに「世界観を歪めることで作家性が生まれる」というより無茶な仮説の実証を目指すのがゲームブックAI。

ここまで来てしまうと安田均のいう「作家性」とは定義が違ってきそうだが、そこは掘り下げないのが吉。掘り下げてしまうと何も作れなくなるので。

 

TRPGでは双方向性や即興性が面白さの鍵となる一方で世界観という軸は大事にする必要があるという考え方が一般的だろうが、その軸を換骨奪胎できるかというのがこのAIの肝となる。